藍染めに限らず、草木染めなど多くの染物は、布に織られた状態のものを染めます。それに対して私たちが生業として受け継いできたのは、天然発酵建ての藍液を育て、糸の状態で染める=「天然発酵建て・先染め」の藍染め技法。ここではほんの少しだけ、その工程をご紹介しましょう。
極めて希少な四国産の蒅(すくも)
藍染めの原料は、タデ科の植物の葉です。夏の開花前に収穫した葉を乾燥させ、さらに発酵させたものを蒅(すくも)といい、これが藍染めの原液(藍液)の原料となります。蒅の製造は、乾燥した藍の葉を堆積し、灌水と切り替えしを15~20回、5~7日ごとに繰り返し発酵させる手間のかかる作業です。完成までに約3ヶ月。野川染織工業では、今では希少となった国内・四国産の蒅を仕入れ、使用しています。
原料となるタデ科の植物
発酵させ完成した蒅
白っぱたき
先染めの仕上がりを左右する職人の技
精練の前にすべての白糸を手でさばきます。白っぱたき3年。糸の状態が悪いと、それだけ藍の食い込みや均一性が損なわれます。一見簡単そうで実はこの作業も手を抜けません。年季と根気が要求されます。
天然発酵建て
藍液を労わり、自然と対話しながら藍を建てる
藍は水に溶けません。染色をするためには、この藍から染液をつくらなければなりません。これを“建てる”と言います。良好な状態の藍液を作るには、四季折々の気温や湿度を肌で感じながら、毎日ほどよく攪拌させる必要があります。むやみやたらに掻いたら藍は弱ってしまいます。その勘どころが何より難しい。熟練を要する作業です。
藍によって命を吹き込まれた糸が、天然発酵建て・先染めの証
野川染織独特の風合いと肌触りは、30回以上繰り返される染めの作業によって生まれます。そして、つややかささえ感じる一本一本の糸が、このあと、今なお現役で活躍する旧式シャトル織機で織られ、ベテランの縫製師たちの手で自在に姿を変えるのです。
単なる工業製品とは違う、
郷土への愛を胸に。
「野川の藍は色合いも肌触りも他と違う」。そんなお客様の声をよくいただきます。その最大の要因は、機械化された数値ではなく、職人が染まり具合そのものを見極めながら、ひと綛ひと綛と真摯に向き合っているから。初めて身にまとったときはもちろん、年数を経るごとに、風合いも愛着も増してくるはず。ぜひ、その違いをあなたにも感じていただけたら嬉しいです。